テーマ | 契約とは何か |
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担当教員 | 黒田 尚樹(経営学部 ビジネス法学科) |
講義内容 | 一 導入 ―法律は自由の敵か― 皆さんの持つ法律のイメージはきっと「お上が僕たちを取り締まるためのルール」というようなものではないでしょうか。校則の延長に位置づけられているかもしれません。そういう法律があるのも事実です。けれども、この授業で皆さんにお話したい民法という法律はそのようなものではありません。 それでは、皆さんは民法にはどんなイメージを持っていますか。最近、テレビ番組などで法律相談が行われていますので、なんとなくはあるかもしれません。そして、それは、もしかしたら、お金を請求する権利を与えてくれる法律だ、というようなものかもしれません。それもまた一面では事実ですが、残念ながら、本質的な解答ではありません。民法は、理想とする社会像を持っています。それは、ビジネス用語流にいえば、国と私たち双方がwinwinの関係になれるような社会像です。そのような社会を実現するために、民法が用意したシステムを「契約」と呼びます。そして、このシステムの根幹には私たちの「意思」というファクターが置かれています。 つまり、民法は、法律ではなく、意思によって、社会を規律しようという壮麗な試みなのです。 二 契約の成立 ―意思を取り込むための法システム― 二人の意思の結合によって契約は成立します。私たちは、意思を相手方に伝えるための手段として、言葉を持ちます。相手方も、自分の意思を私たちに伝えるために言葉を用いるでしょう。ところが、言葉は意思と完全に対応しないという本質的な欠点を持っています。みなさんも、メールのやり取りの中で友達に誤解を生じさせてしまった経験があると思います。そんな言葉の多義性をどのようにシステムに組み込むのか、ここでは、そんな試みをご紹介したいと思います。 三 現代における契約の新しい展開 現代社会においては、商品・サービスの内容も、取引の形態も非常に高度化しています。この高度化は私たちの暮らしを大変便利で豊かにしました。他方で、複雑になった社会は、私たちから「意思」することを奪ってしまったのかもしれません。 そんな新しい社会の到来によって、民法というシステムも変容を迫られることになります。何をどのように変えれば良いのでしょう。「意思」は捨てさられてしまうのでしょうか。 |